私はのんちゃん Part.9


9−3

 ノンちゃんを保健室まで連れていってくれたのは枝川だった。
夏休みのせいもあってか、保健の先生はいなかった。
ノンちゃんは皮肉にも、
枝川先輩に看病されるはめになった。
枝川はノンちゃんをベットに寝かせると、
「ちょっと待っててね。」
そう言って、保健室の洗い場に行き、洗面器に水を入れ始めた。
そして冷凍庫からありったけの氷を洗面器の中に入れ、
自分のタオルをその中に入れた。
枝川はタオルをぎゅっと絞って、ノンちゃんの額の上に乗せた。
「どぉ、気持ちいいでしょ。」
「はい。」
枝川の言う通り、ノンちゃんは気持ちが楽になった。
 普段から2年生の先輩6人は1年生とはあまり話さなかったが、
枝川先輩だけは例外だった。
中学の時は軟式テニスをやっていたノンちゃんが、
高校に入学して硬式テニス部に入部したとき、
最初はこういうラケットがいいよとか、テニス部の決まりごとなどを
教えてくれたのは枝川先輩だった。
別にノンちゃんだけに限ったことではない。1年生7人、
自分たちの意思を先輩に伝える時は決まって
枝川先輩を通すのである。
そんな時ノンちゃんは、私も来年になったら枝川先輩のように
なりたいと、はっきり言えば、憧れていたのである。
だから、ノンちゃんは枝川先輩に中島先輩をとられたものの、
決して枝川先輩に嫉妬することはなかった。

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