私はのんちゃん Part.9
ノンちゃんを保健室まで連れていってくれたのは枝川だった。 夏休みのせいもあってか、保健の先生はいなかった。 ノンちゃんは皮肉にも、 枝川先輩に看病されるはめになった。 枝川はノンちゃんをベットに寝かせると、 「ちょっと待っててね。」 そう言って、保健室の洗い場に行き、洗面器に水を入れ始めた。 そして冷凍庫からありったけの氷を洗面器の中に入れ、 自分のタオルをその中に入れた。 枝川はタオルをぎゅっと絞って、ノンちゃんの額の上に乗せた。 「どぉ、気持ちいいでしょ。」 「はい。」 枝川の言う通り、ノンちゃんは気持ちが楽になった。 普段から2年生の先輩6人は1年生とはあまり話さなかったが、 枝川先輩だけは例外だった。 中学の時は軟式テニスをやっていたノンちゃんが、 高校に入学して硬式テニス部に入部したとき、 最初はこういうラケットがいいよとか、テニス部の決まりごとなどを 教えてくれたのは枝川先輩だった。 別にノンちゃんだけに限ったことではない。1年生7人、 自分たちの意思を先輩に伝える時は決まって 枝川先輩を通すのである。 そんな時ノンちゃんは、私も来年になったら枝川先輩のように なりたいと、はっきり言えば、憧れていたのである。 だから、ノンちゃんは枝川先輩に中島先輩をとられたものの、 決して枝川先輩に嫉妬することはなかった。 |