私はのんちゃん Part.4
「それはそうと、もうすぐ夏休みだよな。お前どっか行くのか。」 「別にそんな予定なんかないですよ。 多分、ずっと部活に出ていると思います。」 「俺もそうなんだよな。遊びたいけど、宿題もあるしな。 あっ、宿題で思い出したけど、読書感想文はどうするんだ。」 「えっ、そんなもん出るんですか。」 「ああ。1年じゃ知らないかもしんないけど、毎年全学年あるんだぜ。」 「えー。そうなんですか。面倒くさいですね。」 「お前だったら、どんなの読むんだ。」 「別に。適当ですよ。だいたい本の後ろって、 解説が書いてあるじゃないですか。 それをほんの少しだけ変えて出しちゃいますよ。 中学の時は全部そうでしたね。先輩はどうなんですか。」 「俺か。俺もそんなところだ。」 悪い方向で話の合う2人である。 それでも中島は少しずつノンちゃんとの会話が弾んできたのが うれしいのか、調子にのって話を続けた。 「まず読む本がそもそも面倒だよな。 真面目な本を選ばなくちゃいけなんいだろ。 そういうのだと、話の内容は古くて暗いし、日常的じゃないしよ。 しかも夏休みのあの時期だと、訳の分かんない戦争体験の本 ばっかりだもんな。 まあまあ真面目な本でも、今現在の話で、明るくて、日常的で、 そんでもって、できれば主人公がかわいい女子高生だったら 読んでもいいかな。お前、そんな本を知らないか。」 「知りませんよ。そんなの。」 中島も高校生にしては随分と立派なことを言うが、 やはりここは場所と雰囲気を考えてほしいものである。 その後、2人はサイクリングロードが一時寸断される 東西線の鉄橋の下まで出て、境川に沿って歩いた後、 にぎやかな通りをぬけて浦安駅に着いた。 せっかくのデートスポットともいえる場所であったが、 2人の仲が進展することもなく、堅い話ばかりで終って しまったようである。 |