私はのんちゃん Part.4


4−3

「それはそうと、もうすぐ夏休みだよな。お前どっか行くのか。」
「別にそんな予定なんかないですよ。
多分、ずっと部活に出ていると思います。」
「俺もそうなんだよな。遊びたいけど、宿題もあるしな。
あっ、宿題で思い出したけど、読書感想文はどうするんだ。」
「えっ、そんなもん出るんですか。」
「ああ。1年じゃ知らないかもしんないけど、毎年全学年あるんだぜ。」
「えー。そうなんですか。面倒くさいですね。」
「お前だったら、どんなの読むんだ。」
「別に。適当ですよ。だいたい本の後ろって、
解説が書いてあるじゃないですか。
それをほんの少しだけ変えて出しちゃいますよ。
中学の時は全部そうでしたね。先輩はどうなんですか。」

「俺か。俺もそんなところだ。」
悪い方向で話の合う2人である。
それでも中島は少しずつノンちゃんとの会話が弾んできたのが
うれしいのか、調子にのって話を続けた。
「まず読む本がそもそも面倒だよな。
真面目な本を選ばなくちゃいけなんいだろ。
そういうのだと、話の内容は古くて暗いし、日常的じゃないしよ。
しかも夏休みのあの時期だと、訳の分かんない戦争体験の本
ばっかりだもんな。
まあまあ真面目な本でも、今現在の話で、明るくて、日常的で、
そんでもって、できれば主人公がかわいい女子高生だったら
読んでもいいかな。お前、そんな本を知らないか。」
「知りませんよ。そんなの。」
中島も高校生にしては随分と立派なことを言うが、
やはりここは場所と雰囲気を考えてほしいものである。
その後、2人はサイクリングロードが一時寸断される
東西線の鉄橋の下まで出て、境川に沿って歩いた後、
にぎやかな通りをぬけて浦安駅に着いた。
せっかくのデートスポットともいえる場所であったが、
2人の仲が進展することもなく、堅い話ばかりで終って
しまったようである。

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