私はのんちゃん Part.2


2−1

 そんな気持ちが続く中、期末テストが終ってしまった。
赤点はなかったが、それほど良い成績というほどのものでもなかった。
本人は気持ちの上で色々なことがあったから、こんな成績なのだろうと
納得しているようだが、それが実力相応であることに気がついていない。
ともあれ、期末テストが終ったので、部活が再開された。
その最初の日曜日だった。
午前中に練習が終って、ノンちゃんが後片付けをしていると、
少し離れた部室の前で女子の先輩である枝川君江と中島の
会話が耳に入ってきた。
幸か不幸か、2人はノンちゃんに気づいていない。
「ねえ、中島君。この前、1年生の深川さんと2人乗りしてたでしょ。」
「え、うん。まあね。」
中島があいまいな返事をすると、枝川は冷やかしげな口調で言った。
「なんでよ。あの子は舞浜駅、中島君は浦安駅じゃない。
なんかあるんじゃないの。」

「別に理由はないけどさ。まあ、深川って、けっこうかわいいじゃん。」
論理的には全く説得力のない言葉だが、人情的にはこの言葉ほど
説得力のあるものはない。枝川はもっとつっこむつもりのようだが、
「ふーん。そうなの。」
と言ったきりで会話を終らせてしまった。
ノンちゃんはもっと2人の会話がどうなるのか聞きたかったが、
これで終ってしまったなと思って2人の前に姿を現した。
2人は何もなかった様子で自分たちの部室の中に入っていった。

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