私はのんちゃん Part.1


1−3

 1日の授業が終って、学校を出る頃には雨がすっかりと
上がっていた。
ノンちゃんがバス停の方を歩いていると、
後ろから男の声に呼び止められた。
「おい、深川、バスに乗るのか。」
振り返ってみると、テニス部2年生の中島文宏だった。
ちょっとかっこいい。
中島は自転車に乗っていた。
「先輩、来るとき、自転車だったんですか。」
「ああ、そうだよ。別に濡れても気にしちゃいないよ。
それよりも駅まで送ってやるから後ろに乗れ。」

「えっ、じゃあ、舞浜駅まで乗せてってくれるんですか。」
「舞浜か。まあいいや。乗れよ。」
ノンちゃんの通う学校は京葉線の舞浜駅の他に、
東西線の浦安駅からでも行くことができる。
中島はてっきりノンちゃんが自分と同じ東西線を使っている
のだと思って誘ったのだろう。
ノンちゃんの方は、急にそんな事を言われて一瞬戸惑ったが、
男の人から誘われることにうれしさを感じていたので、
送ってもらうことにした。
ノンちゃんは自転車の後輪の軸に足を乗せて、
中島の肩につかまった。
ノンちゃんは駅に着くまで不思議な気持ちだった。
歩いて駅まで行く学校の人たちが自分たちを
見ていることに気がつく度に、うれしいような、
恥ずかしいような気持ちになった。
その日のノンちゃんは家に帰っても、
そのことが頭に浮かんでそわそわとして、
いつもよりも寝た時間が遅かった。

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