私はのんちゃん Part.1
1日の授業が終って、学校を出る頃には雨がすっかりと 上がっていた。 ノンちゃんがバス停の方を歩いていると、 後ろから男の声に呼び止められた。 「おい、深川、バスに乗るのか。」 振り返ってみると、テニス部2年生の中島文宏だった。 ちょっとかっこいい。 中島は自転車に乗っていた。 「先輩、来るとき、自転車だったんですか。」 「ああ、そうだよ。別に濡れても気にしちゃいないよ。 それよりも駅まで送ってやるから後ろに乗れ。」 「えっ、じゃあ、舞浜駅まで乗せてってくれるんですか。」 「舞浜か。まあいいや。乗れよ。」 ノンちゃんの通う学校は京葉線の舞浜駅の他に、 東西線の浦安駅からでも行くことができる。 中島はてっきりノンちゃんが自分と同じ東西線を使っている のだと思って誘ったのだろう。 ノンちゃんの方は、急にそんな事を言われて一瞬戸惑ったが、 男の人から誘われることにうれしさを感じていたので、 送ってもらうことにした。 ノンちゃんは自転車の後輪の軸に足を乗せて、 中島の肩につかまった。 ノンちゃんは駅に着くまで不思議な気持ちだった。 歩いて駅まで行く学校の人たちが自分たちを 見ていることに気がつく度に、うれしいような、 恥ずかしいような気持ちになった。 その日のノンちゃんは家に帰っても、 そのことが頭に浮かんでそわそわとして、 いつもよりも寝た時間が遅かった。 |