私はのんちゃん Part.7
夏休みのある日、不機嫌ながらもノンちゃんは部活を終らせ、 家に帰る駅に降りて、 階段を上りきった改札の手前のところで、 後ろから肩をたたかれた。 「ノンちゃん。」 「えっ。あっ、ユッタンじゃん。」 ユッタンとはノンちゃんの幼稚園からの幼なじみで、 名前は富岡由美。幼稚園から小学校6年まで同じクラスで、 中学校からクラスは離れてしまったものの、 3年の時には2人でわざわざ遠い塾まで通っていた仲である。 「ノンちゃん、久しぶりだね。」 「そうだね。久しぶり。高校楽しくやってる?」 「うん、まあね。それよりノンちゃんの制服かわいいね。 特にリボンがいいよね。私なんか仏教系だから地味なんだもん。」 と、ユッタンの言葉は謙遜はしているが、 学校の偏差値はユッタンの方が上なので口調には余裕がある。 「そ、そうかな。」 そう言いながらノンちゃんは下を向いて、自分の制服姿をわざわざ 後ろまで見回してみた。ノンちゃんは夏の制服姿を友達に 何かを言われたのは初めてだったが、 ほめられたのが制服だけだったことには気がついていない。 2人は改札を出て、外を歩きながら今までの高校生活を話し合った。 話の途中で、ノンちゃんは思い出したようにユッタンに話しかけた。 「ところでユッタン、あの人とはまだ続いているの?」 「うん、一応はね。春休みの頃はよく2人で出かけてたけど、 でも最近は部活で忙しいって、会ってくれないんだ。 多分もうおしまいだと思うよ。」 「そんな。もったいないね。」 「しょうがないよ。それよりノンちゃんはどうなのよ? 誰か見つけたの?」 まだ彼氏のいないノンちゃんだったが、中島の顔がとっさに浮かんだため、 「私は…。もう少しかな。」 「ええっ。そうなの? ね、ね、どんな人よ。どっちが好きなの?」 「うーんと、どちらかというと、向こうかな。 でも、まだこれといって何もないって。何かあったら教えるね。」 と、正直なところ、ノンちゃんは少し見栄を張った。 「へぇーそうなんだ。でもノンちゃんはかわいいから大丈夫だよ。」 「そ、そうかな。」 「うん、きっとそうだよ。由香ちゃんもこの間彼氏ができたみたいだし。 あっ、そう直ちゃんもいるって聞いたよ。カレシだけどね。」 ノンちゃんには彼氏とカレシの区別がつかなかったが、 そんな微妙な差は今のノンちゃんにはどちらでも一緒である。 「そうなんだ。みんないるんだね。いないのは私だけじゃん。 やばいよね。でも、ユッタン、よく知ってるね。」 「うん。けっこう電車で一緒になるんだ。」 「えー、いいな。私だけ千葉だもんね。」 そんなことを話している間に、2人はそれぞれの家に行く角に来てしまった。 「ユッタンとまた会えるといいね。」 「そうだね。その時はさっきの人が彼氏になっているといいね。 ちゃんと聞かせてね。」 「うん。じゃあ、バイバイ。」 |