種類 |
基本形 |
語幹 |
未然形 |
連用形 |
終止形 |
連体形 |
仮定形 |
命令形 |
四段 |
言ふ |
言 |
は |
ひ |
ふ |
ふ |
へ |
へ |
上一段 |
見る |
○ |
み |
み |
みる |
みる |
みれ |
みよ |
下一段 |
蹴る |
○ |
け |
け |
ける |
ける |
けれ |
けよ |
上二段 |
過ぐ |
過 |
ぎ |
ぎ |
ぐ |
ぐる |
ぐれ |
ぎよ |
下二段 |
出づ |
出 |
で |
で |
づ |
づる |
づれ |
でよ |
カ変 |
来 |
○ |
こ |
き |
く |
くる |
くれ |
こ(よ) |
サ変 |
す |
○ |
せ |
し |
す |
する |
すれ |
せよ |
ナ変 |
往ぬ |
い |
な |
に |
ぬ |
ぬる |
ぬれ |
ね |
ラ変 |
あり |
あ |
ら |
り |
り |
る |
れ |
れ | |
四段活用…五十音図のア・イ・ウ・エの四段に活用する。
言ふ |
女御とだに言はせずなりぬるが、飽かず、(源氏物語・桐壺) (女御とさえも言わせずに終わってしまったことを、物足りなく、) |
[未然] |
とげなきものをば、あへなしと言ひける。(竹取物語・火鼠の皮衣) (はりのないものを「あへなし」と言うようになった。) |
[連用] |
いかなるをか智と言ふべき。(徒然草・三八段) (どういうものを智というのであろうか。) |
[終止] |
いかなるをか善と言ふ。(徒然草・三八段) (どういうものを善というのであろうか。) |
[連体] |
したり顔に物なれて言へるかなと、(源氏物語・夕顔) (得意そうな顔に物慣れた様子で歌を詠んできたものだなぁと、) |
[已然] |
「本言へ」と仰せらるるも、いとをかし。(枕草子・九九段) (「上の句を言いなさい」とおっしゃるのも、とてもおもしろい。) |
[命令] | 上一段活用…五十音図のイ段に活用する。 「着る」「見る」「似る」「煮る」「射る」「鋳る」「居る」「率る」「干る」など。
見る |
「いかで月を見ではあらん」とて、、(竹取物語・かぐや姫の昇天) (「どうして月を見ないでいられましょうか。」といって、) |
[未然] |
今は目にも見たまへ。(平家物語・木曾の最後) (今は(優れた武士である私の姿を)目に見なされ。) |
[連用] |
今は見るらん。(平家物語・木曾の最後) (今は見るだろう。) |
[終止] |
内裏にも、見るは、いとせばきほどにて、(枕草子・三段) (宮中で拝見するするのはとても狭い範囲であって、) |
[連体] |
「君をし見れば」と書きなしたる、御覧じ比べて、(枕草子・二三段) (「君をし見れば」と書き変えたのを(中宮様は)見比べなさって、) |
[已然] |
出でて見よ。例ならずいふは誰ぞ(枕草子・一三七段) (出てご覧なさい。いつにない言い方をする人は誰ですか。) |
[命令] | 下一段活用…五十音図のエ段に活用する。「蹴る」の一語だけ。
蹴る |
尻蹴んとする相撲、(宇治拾遺物語・二−一三) (尻を蹴ろうとする相撲取りが、) |
[未然] |
頭け割られ、腰ふみ折られて、をめきさけぶ者おほかりけり。(平家物語・富士川) (頭を蹴り割られ、腰を踏まれ折られ、大声をあげて叫ぶ者が多かった。) |
[連用] |
さと寄りて、一足づつ蹴る。(落窪物語・二) (さっと寄って、一足ずつ蹴る。) |
[終止] |
鞠を蹴る事か。(浮世物語・四) (鞠を蹴るということか。) |
[連体] |
円子[まりこ]川蹴ればぞ波はあがりける。(源平盛衰記・三七) (円子川を蹴ってみると、波が上がったことだ。) |
[已然] |
尻蹴よ。(宇治拾遺物語・二−一三) (尻を蹴れ。) |
[命令] | 上二段活用…五十音図のイ段とウ段に活用する。
過ぐ |
もろこし船を慕ひつつ領布振りけんも、これには過ぎじとぞみえし。(平家物語・足摺) (もろこし船を慕い領布を振ったという悲しみも、この俊寛の悲しみには優るとは見えなかった。) |
[未然] |
笛をいとをかしく吹き澄まして過ぎぬなり。(更級日記) (笛をとても澄んだ音色で吹いて去っていた様子でした。) |
[連用] |
かくて、宇多の松原をゆき過ぐ。(土佐日記・一月九日) (このようなことになって、宇多の松原を通過した。) |
[終止] |
いたう暗きに松どもともして夜半過ぐるまで人の門たたき走りありきて(徒然草・一九段) (とても暗い中で、たいまつなどを灯して夜中を過ぎるまで人の家の門を叩いて走り回って) |
[連体] |
良頼の兵衛督[ひょうえのかみ]と申しし人の家の前を過ぐれば、(更級日記) (良頼の兵衛督と申し上げる人の家の前を過ぎると、) |
[已然] |
はやく過ぎよ。(枕草子・九九段) (早く通り過ぎなさい。) |
[命令] | 下二段活用…五十音図のウ段とエ段に活用する。
出づ |
君すでに都を出でさせたまひぬ。(平家物語・忠度の都落ち) (主上はもはやすでに都をお出になられました。) |
[未然] |
御使いに竹取出で会ひて、泣く事かぎりなし。(竹取物語・かぐや姫の昇天) (お使いに竹取の翁が出て会い、限りなく泣く。) |
[連用] |
大津より浦戸をさしてごぎ出づ。(土佐日記・一二月二七日) (大津から浦戸を目指して船を漕ぎ出す。) |
[終止] |
二十日の、夜の月出づるまでぞありける。(土佐日記・一月二〇日) (二十日の夜の月が出るまでそうしていたのでした。) |
[連体] |
月出づれば、出でゐつつなげき思へり。(竹取物語・かぐや姫の昇天) (月が出ると、家から出て座って嘆き考え込んでいる。) |
[已然] |
狼藉なり。まかり出でよ。(平家物語・殿上の闇討ち) (無法者だ。退出せよ。) |
[命令] | カ行変格活用…「来」の一語だけ。
来 |
また家のうちなる男君の来ずなりぬる、いとすさまじ。(枕草子・二五段) (また家の内に迎えて、通っている婿君が来なくなってしまうのもとても面白くない。) |
[未然] |
いまはもて来ぬらむかし、(枕草子・二五段) (いまはきっともう持ってきているでしょう。) |
[連用] |
また、かならず来べき人のもとに車をやりて待つに、(枕草子・二五段) (また、必ず来るはずの人のところに牛車をやって待っていると、) |
[終止] |
女房の従者、その里より来る者、(枕草子・二四段) (女房の従者、その里より来る者、) |
[連体] |
夜ふけて来れば、ところどころも見えず。(土佐日記・二月一六日) (夜がふけてから(京の都に)来たので、要所が見分けられない。) |
[已然] |
「とく来」と言ひやりたるに、(枕草子・二五段) (「早く帰ってきなさい」と呼びにやっても、) |
[命令] | サ行変格活用…「する」「おはする」の二語だけ。
す |
などか最後のいくさせざるべき。(平家物語・木曾の最後) (どうして最後の戦をしないでいられようか。) |
[未然] |
馬の鼻を並べて駆けんとしたまへば、(平家物語・木曾の最後) (馬の鼻を並べて駆け入ろうとなさるので、) |
[連用] |
かれこれ、知る知らぬ、送りす。(土佐日記・一二月二一日) (あの人やこの人、知っている人や知らない人までが見送りをする。) |
[終止] |
尼ぜ、われをばいづちへ具して行かんとするぞ。(平家物語・先帝身投) (尼御前、私をどこに連れて行こうとするのですか。) |
[連体] |
夜鳴かぬもいぎたなきここちすれども、(枕草子・四一段) (夜に鳴かないのも寝坊な感じがするけれど、) |
[已然] |
世渡るたづきともせよ。(徒然草・一八八段) (生活の手段にしなさい。) |
[命令] | ナ行変格活用…「死ぬ」「往ぬ」の二語だけ。
往ぬ |
御送りして、とくいなむとおもふに、(伊勢物語・八三段) ((翁は親王を)お見送りして、早く(自分の家に)帰ろうとしたが、) |
[未然] |
逃げて往にけるも知らず、(枕草子・四三段) (逃げてしまったのもわからずに、) |
[連用] |
一人二人すべりいでて往ぬ。(枕草子・二五段) (一人二人こっそりと立ち去ってしまう。) |
[終止] |
牛のかぎり引きいでて往ぬる。(枕草子・二五段) (牛だけを引き出して出て行ってしまう(のは興ざめである。)) |
[連体] |
「いましづかに、御局にさぶらはむ」とて往ぬれば、(枕草子・八段) (「近いうちに、お部屋に伺いましょう。」と言って立ち去ったので、) |
[已然] |
「往ね。いま聞こえむ」とて、ふところに引き入れて入りぬ。(枕草子・八二段) (「帰りなさい。すぐ申し上げましょう。」と言って、(手紙を)ふところに入れてうちに入った。) |
[命令] | ラ行変格活用…「あり」「をり」「はべり」「いまそ(す)がり」の四語だけ。
あり |
自然のことあらん時、物の具して頼朝が乗るべき馬なり。(平家物語・宇治川の先陣) (万が一の場合のとき、鎧・兜などをで身を固め、(馬には)鞍や鐙をつけて頼朝が乗るはずの馬である。) |
[未然] |
さるものありとは鎌倉殿までもしろしめされたるらんぞ。(平家物語・木曾の最後) (そのような者がいるということは、鎌倉殿までもご存知でいらっしゃることであろう。) |
[連用] |
三十人が力を持つたる大刀の剛の者あり。(平家物語・能登殿最後) (三十人の力を持つ大刀の剛武士の者がいた。) |
[終止] |
撰集のあるべき由承り候ひしかば、(平家物語・忠度の都落) (勅撰集が選ばられるはずだと伺いましたので、) |
[連体] |
所望の者はいくらもあれども、存知せよ。(平家物語・宇治川の先陣) (いただきたいと願う者はいくらでもいるのだが、承知して(受け取れ)。) |
[已然] |
後日にはいかなる御勘当もあらばあれと存じて、(平家物語・宇治川の先陣) (後にどのようなお叱りがあるのならあれと思いまして、) |
[命令] | |
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※活用の見分け方 |
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未然形をつくる→ |
ア段→四段活用 |
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[例] |
書か[ア](ず)→五段活用 |
イ段→上二段活用 |
起き[イ](ず)→上二段活用 |
エ段→下二段活用 |
捨て[エ](ず)→下二段活用 | |
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活用の知識 |
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語幹…活用しても変わらない部分。
未然形…「ず」「む」につながる形。 終止形…言い切りの形。基本形ともいう。 仮定形…「ば」につながる形。 |
活用語尾…活用によって変わる部分。
連用形…「き」「けり」「たり」につながる形。 連体形…「なり」につながる形。 命令形…命令の意味になる形。 |
※動詞には、語幹と活用語尾との区別のつかないものもある。(上の活用表では○で表している) [例]見る 蹴る 来 す | |
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動詞の種類とはたらき |
音便…発音の都合で、語の末尾の音が変化すること。 イ音便・ウ音便・撥音便・促音便の4種類がある。
イ音便…「い」の音に変わる。 カ行・ガ行・サ行の四段動詞の連用形+「て」「たり」に連なる場合に現れる。 舎人あまた付いたりけれども、(平家物語・宇治川の先陣)[四段・カ行] (舎人がたくさんもついていたけれども、) [付き]→[付い]
貫脱いではだしになり、橋の行桁をさらさらさらと走り渡る。(平家物語・橋合戦)[四段・カ行] (靴を脱いではだしになり、橋の行桁をさささっと橋って渡った。) [脱ぎ]→[脱い]
さしも御秘蔵候ふいけづきを、盗みすまいて上りさうはいかに。(平家物語・宇治川の先陣)[四段・サ行] (特に大事になさっているいけづきを、うまく盗み取って、こうして上りますのはどうです。) [盗みすまし]→[盗みすまい]
ウ音便…「う」の音に変わる。 ハ行・バ行・マ行の四段動詞の連用形+「て」「たり」に連なる場合に現れる。 主従駒を速めてより会うたり。(平家物語・木曾の最後)[四段・ハ行] (主君と家来とが(互いに)馬を速めて近寄った。) [より会ひ]→[より会う]
御書をあそばいてたうだりけり。(平家物語・小督)[四段・バ行] (お手紙をお書きになられ、お与えになられた。) [たび(賜び 給び)]→[たう]
あるじの女房の、今宵ばかりのなごりを惜しうで、(平家物語・小督)[四段・マ行] (家の主人の女房が、今夜限りになった名残を惜しんで、) [惜しみ]→[惜しう]
撥音便…「ん」の音に変わる。 バ行・マ行の四段動詞の連用形・ナ変の連用形+「て」「たり」に連なる場合に現れる。 判官の船に乗りあたつてあはやと目をかけて飛んでかかるに、(平家物語・能登殿最後)[四段・バ行] (判官の船にうまく乗り合わせ、さっと目をつけて飛びかかると、) [飛び]→[飛ん]
梶原は佐々木に一段ばかりぞ進んだる。(平家物語・宇治川の先陣)[四段・マ行] (梶原は佐々木よりも一段ほど進んでいた。) [進み]→[進ん]
ここで佐々木に引つ組み、刺し違へよい侍二人死んで、(平家物語・宇治川の先陣)[ナ変] (ここで佐々木と取っ組み、刺し違えて立派な侍が二人死んで、) [死に]→[死ん]
促音便…「っ」の音に変わる。(ただし、文語では「つ」と書かれる。) タ行・ハ行・ラ行の四段動詞の連用形・ラ変の連用形+「て」「たり」に連なる場合に 現れる。 おのおの鎌倉を立つて、足柄を経て行くもあり、(平家物語・宇治川の先陣)[四段・タ行] (それぞれ鎌倉を出発して、足柄山を通って行く者もいたり、) [立ち]→[立つ]
火のほの暗いき方に向かつて、(平家物語・殿上闇討ち)[四段・ハ行] (灯の薄暗い方向に向かって、) [向かひ]→[向かつ]
御書を給はつて参つて候。(平家物語・小督)[四段・ラ行] (お手紙をいただいてまいりました。) [給はり]→[給はつ] [参り]→[参つ]
ややあつて、内より人のいづる音のしければ、(平家物語・小督)[ラ変] (しばらくして、家の内より人が出てくる物音がしたので、) [あり]→[あつ]
自動詞と他動詞 ・終止形も活用の種類も異なる。 [自動詞]起く[上二段・カ行]…き・き・く・くる・くれ・きよ [他動詞]起こす[四段・サ行]…さ・し・す・す・せ・せ
[自動詞] やおら起きて立ち聞きたまへば、(源氏物語・帚木) (そっと起きて立ち聞きなさると、)
[他動詞] 右近を起こしたまふ。(源氏物語・夕顔) (右近を起こしになる。)
・終止形は同じで、活用の種類が異なる。 [自動詞]頼む[四段・マ行]…ま・み・む・む・め・め [他動詞]頼む[下二段・マ行]…め・め・む・むる・むれ・めよ
[自動詞] 頼みたる方の事は違ひて、(徒然草・一八九段) (こちらが期待している方面のことは違って、)
[他動詞] 頼めぬ人は来たり、(徒然草・一八九段) (こちらを期待させない人が来て、)
・終止形も活用の種類も同じ。 [自動詞]覚ゆ[下二段・ハ行]…え・え・ゆ・ゆる・ゆれ・えよ [他動詞]覚ゆ[下二段・ハ行]…え・え・ゆ・ゆる・ゆれ・えよ
[自動詞] いくつといふこと、さらに覚え侍らず。(大鏡・序) (いくつということはまったく思い出されません。)
[他動詞] いで覚え給へ。(大鏡・序) (さあ、思い出して下さい。)
補助動詞 補助動詞…動詞本来の意味を失い、補助的な意味を添える動詞。 むかしをとこありけり。(伊勢物語・二段)[本動詞] (昔、ある男がいた。)
うらやましくもあるかな。(大鏡・道長伝)[補助動詞] (うらやましいことですなあ。) | |