雨を待つ
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北野つづみ |
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生暖かな風が吹き抜けてゆく ようやく緑の穂をつけた オーチャード・グラスが ざわざわとざわめく
雨が降る
雲はまだ薄く 北の空には光が残っている ふいに、蕗の葉が大きく翻って 声を上げる
雨が降る
恵みの雨よ、どうか 優しく降っておくれ 激しい雨足で、わたしを 打ち倒さないでおくれ
どうして 光だけでは大きく育たないのだろう 怯えながら、震えながら 祈りながら、信じながら
私もまた、雨を待っている
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形式…口語自由詩 主題=「情景変化とその心情」
主な表現技法…反復法
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解説 |
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※はじめに 詩というものは、読み方は自由であり、ここで 解説する内容はあくまでも作者・編者の主観に よるものであることをあらかじめ記しておきます。
その日は朝から雨という天気予報でしたが、 目覚めてカーテンを開けるとまだ雨は降っていま せんでした。けれども、いかにもこれから雨に なりますよという風と雲の様子でした。わたしは ベランダからぼんやりと外を眺めていたのですが、 隣の空き地の大きな蕗の葉が風にバタバタと あおられているのを見て、これから雨が降ったら、 雨に叩かれて、葉が千切れてしまうのではない かしらと思いました。その時、ふいに詩が生まれ るような予感がしました。そうして出来たのが、 この詩です。
なお、オーチャード・グラスはカモガヤの別名です。 草地などによく生えています。作者は北海道は 在住ですので、この詩のイメージとしては北海道 の広い空と草地を思い浮かべていただけると ありがたいです。実際、わたしの住んでいる家 からは青い空が本当によく見えます。
それから、作者としては、この詩の中の 「どうして光だけでは大きく育たないのだろう」 の問いに、ぜひこの詩を読んだ方がそれぞれに 自分なりの答えを探してもらえたらなと思います。 たった一つの正しい答えが簡単に出るような 問いではありませんが、それでも答えの出ない 問いについて考えること、考え続けることが、 人間らしさなのだとわたしは思うからです。
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