紫の背反
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腰越広茂 |
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夕焼けに うす紫に染まった ほほにひとすじ 熱いものが流れて 小さな手のひらで顔をおおう 影が淡く 暗い血潮へ暮れてゆき
無器用な翼の 色調不明する鳴き声が、 空ろに響く 指のすき間から見える 空とのさよならで燃える火球 時は現在 放たれた。 鋭く翻る口から 星の歌が閃く ひとつ ふたつ みっつ よ 限界からあふれる花弁
先刻、臨界した花の 未来は深く眠る運命の雲。 予報の雨は、 大地に落ちることはなく この静脈で霧氷となる 世界樹の先であえぐ私が、 万有引力のバランス内でくぼみ いいえ、と繰り返している
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作品の著作権は作者が保持します。 無断転載を固く禁じます。 | |
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形式…口語自由詩
主題…「道理に背かなくてはならない想いの情景性」
主な表現技法…
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解説 |
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※はじめに 詩というものは、読み方は自由であり、ここで解説する内容 はあくまでも作者・編者の主観によるものであることを予め 記しておきます。
この詩は、主題の通り、「ある想い」を映した情景であります。 この秘めた(秘められた)想いは、読者の方々それぞれに、 詩行の内から「読み取って」、「感じて」下さればと思います。
技術的なことは、 まず、この詩には、感情表現の為の具体的な言葉は使って いません。 例えば、「悲しい」や「楽しい」などです。
感情は、情景を写し取り表現しています。 例えば、一連目の
>ほほにひとすじ >熱いものが流れて >小さな手のひらで顔をおおう >影が淡く >暗い血潮へ暮れてゆき
のようにです。
次に、全体を3連に分けていますが、「文脈」は、読点(、)と 句点(。)で区切ってあります。 これによって、全体の流れをコントロールしています(少なく とも私は、そのつもりです)。
それぞれの効果については、皆さんで考えて頂ければと思い ます。
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