かなしいことが多すぎて
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今村知晃 |
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かなしいことが多すぎて 今夜も僕らは空を飛ぶ
きらめく星はガラスの破片 あるいはナイフの切先か
かなしいことが多すぎて 今夜もノラは水平に鳴く
塀には顔が現れて わらっているのがなおかなしい
ああ さみしい夜だ 誰も知らない (背中合わせの恋人たちとグラスをまわるとがった氷)
かなしいことが多すぎて かなしいことが多すぎるから 今夜も誰もがしゃにむにあくびをしている
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作品の著作権は作者が保持します。無断転載を固く禁じます。 | |
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形式…口語自由詩
主題…「悲を見つめる」
主な表現技法…反復法
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解説 |
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※はじめに 詩というものは、読み方は自由であり、ここで解説する 内容はあくまでも作者・編者の主観によるものであるこ とを予め記しておきます。
かなしいことが多すぎて 今夜も僕らは空を飛ぶ
もちろん、実際に空を飛ぶのではなく、飛ぶのは気持ち とか心です。
かなしいことが多すぎて 今夜もノラは水平に鳴く
「水平に」がいかにもかなしさを表しています。
かなしいことが多すぎて かなしいことが多すぎるから 今夜も誰もがしゃにむにあくびをしている
こうした「かなしい」気持ちを「あくび」という微妙な言葉 で表すニュアンスが特徴になっています。
かなしいという言葉が割かしに好きです。僕たちは みんなかなしいんじゃないだろうかと時たま思ったり もします。 そんな感覚をかすっていれば、僕としてはまあ満足 です。 傲慢かしら。 そうかも知れない。
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