白樫物語
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Yock |
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冷たい北風に煽られ 凍える霙に打たれても 白樫の木は黙して耐え抜く
容赦ない吹雪の最中 総てを失う事の恐ろしさに 怯えてはならない 大地深く張り巡らした根の先より 明日への滋養を蓄え
敗北を恐れてならない 例え捕囚の身となろうとも 囀る者には決して耳を貸さず
冬来たりなば春遠からじ 幾多の困難に耐えた 白樫の幹は堅く引き締まり 宙を抱え込むように広げた枝々に 柔らかな春の日差しを浴び 雪解け水はせせらぎとなり野山を潤す
それは大地に根ざす息吹きの証し 明日への希望を胸に抱き 暫しまどろむ一本の白樫の木となる
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作品の著作権は作者が保持します。無断転載を固く禁じます。 | |
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形式…口語自由詩
主題…「生の意味」
主な表現技法…
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解説 |
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※はじめに 詩というものは、読み方は自由であり、ここで解説する内容 はあくまでも作者・編者の主観によるものであることを予め 記しておきます。
この作品にはモティーフがあります。それは八重洲ブック センターにて開催された朗読会で朗読された「葉っぱのフレ ディー」という童話です。 葉っぱのフレディーは、そのタイトルの通り春に生まれ晩秋 に散ってしまう一葉の葉っぱの短い生涯を通し精一杯生きる ことの意味、友情の大切さを問う童話ですが、その眼差しを 一本の白樫の木へ向けてみました。 どんなに苦しいこと、悲しい事があっても、必ず春は巡り来る もの。そんな思いを何も語らず、そして確実に芽吹きの時を ひたすらに待つ一本の白樫に託したものです。
詩の構造的には1連目、3連目、5連目が主題部分を受け 持ち、2連目と4連目は、主題を受けての説明的な表現と なっています。
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