田舎道
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落合朱美 |
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ぽくぽくと砂埃の道を 踵の低い靴で歩く 道端にときおり現れる 柿の木の下で 風に吹かれて和みながら
寂れた雑貨店は 小さなオアシスのように見えた 冷蔵ケースのコーラの瓶の くびれたウエストが なぜか可笑しかった
畦道の向こうに すこし朽ちた墓石たちが 寄り添っているのが この村の縮図みたいで 笑みが零れた
父が生まれたこの村に 今年は私が一人で帰ってきた 行き交う人はみな顔見知りで お帰りなさいと言ってくれる
時代遅れの優しさに 照れてしまって ふと脇道を見遣れば 彼岸花が揺れていた |
作品の著作権は作者が保持します。 無断転載を固く禁じます。 | |
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形式…口語自由詩
主題…「素朴な風景の描写」
主な表現技法…擬人法 |
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解説 |
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※はじめに 詩というものは、読み方は自由であり、ここで解説する 内容はあくまでも作者・編者の主観によるものであること をあらかじめ記しておきます。
この詩は、特に意識した技法などはないものの、最初の 「ぽくぽくと」という擬態語はのどかさのあるイメージを 読者に与え、この詩の世界に誘わせる、巧みな技法に なっています。 また、第2連の「コーラ瓶のウェスト」とさほど強くないで すが、擬人法が使われていたりします。
この詩は作者が実際の父親の出身地の田舎の村の 風景を、できるだけ淡々と写実的に書いたもので、この ような作品を叙景詩といいます。 写真で表現すれば済むと思われがちですが、言葉で 風景を表現すると、写真では伝わらない心の温もりまで 読む側(見る側)に伝えることができるのです。
けっして都会ではないのですが、街に暮らしていると、 田舎の人々の屈託のない優しさがこそばゆく感じられ たりします。 それでもなんとなく素朴な風景と人々の中で心休まる 時間を求めて、作者は実際に時々この村を1人で こっそり訪ねたりしています。
この作品を通じて、その心を感じとれればと思います。
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